短歌千三百年の晩年は今かも鱗雲の暮れゆく
明治以降、何度か「短歌滅亡論」が語られたが、それでも歌はしぶとく生き続けてきた。1300年の歴史を持つ詩型は強固で、簡単に滅びるものではないだろう。だが「人間が作る短歌」に限ればどうか。生成AIの驚異的な進化により、文章も画像も映像も自在に作り出せる時代がすぐそこに来ている。短歌はまだ下手だが、いずれ人間歌人を上回る能力を持つだろう。そのとき、AIの作った短歌は短歌と言えるのか。AI歌人は歌人と言えるのか。人間歌人はAI歌人のプロデューサーになるほかないのか。「晩年」の一語から、そんなことを考えた。
作者/加古陽(かこよう)

1962年、愛知県生まれ。「心の花」「微文積文」会員。東京新聞編集委員。第54回角川短歌賞次席。歌集『夜明けのニュースデスク』(前川佐美雄賞・筑紫歌壇賞)。歌書『一首のものがたり』(日本歌人クラブ評論賞)

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