水筆の輪郭青く耳川は耳のかたちに流れゆくなり
耳川という珍しい名の川は、どこを流れているんだろう。そう思ってグーグルマップを覗いてみたら、中流に耳がふたひら互い違いにくっついているような場所があった。若山牧水の生家に近い、宮崎県日向市東郷町八重原(はえばる)あたり。自然の手による造形だ。夜空にこのような星の連なりがあったら、「耳座」と名付けられたかもしれない。
作者/加古陽(かこよう)

1962年、愛知県生まれ。「心の花」「微文積文」会員。東京新聞編集委員。第54回角川短歌賞次席。歌集『夜明けのニュースデスク』(前川佐美雄賞・筑紫歌壇賞)。歌書『一首のものがたり』(日本歌人クラブ評論賞)

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