久永草太

アル綿の雫に文字はにじみゆきカルテに咲いてしまう朝顔 注射を打つとき、採血をするとき、病院で何...

この国の月が向かうは西でなく右かもしれず十三夜更く 戦後八十年間国民を守り続けてきた日本国憲法...

牛乳を注ぐ女のエプロンにラピスラズリが砕かれた朝 最近、鉱物と岩石の図鑑を買って読むのが楽しい...

つまさきに住む魔女がいてブレーキを踏ませる　猫が飛び出してくる 間に合った。仔猫だった。なんで...

黒い目はムス・ムスクルス・ムスクルス実験室の夜を吸いし目 ハツカネズミ、いわゆるマウスの学名は...

指先に鱗粉のこる静かさであなたに記憶されたく思う 先の日曜日に、伊藤先生の県民栄誉賞の祝賀会が...

次に貸す本を選るとき本棚は鎮守の森に似てさんざめく この間うちから『オレがマリオ』をかっぱらっ...

まどろみと酔いの間あわいに海はゆれ海をゆらしてわたしは魚 今日は牧水祭であり、牧水の命日。こち...

地を蹴れば地は蹴られおり一歩ずつ赦されながらのぼる坂道 明日は伊藤先生の誕生日。おめでとうござ...

わたくしがとる首なきをとくとくと二合徳利に啼かせておりぬ 昨日の佐藤モニカさんの歌は〈月光の訛...