No.638/2025年9月29日【魔女】 つまさきに住む魔女がいてブレーキを踏ませる 猫が飛び出してくる

久永草太

間に合った。仔猫だった。なんで今のに反応できたろうかと自分でも不思議に思うような急ブレーキが、ごくまれにある。まるで何かに突き動かされたような、いつ踏んだかもわからないようなブレーキ。神様にせよ魔女にせよ、僕にこの猫を轢かせないでくれてありがとうと伝えたい。これは猫にとってのラッキーであり、僕にとってのラッキーであり、しかし所詮はラッキーなのだ。気を引き締めなければ。

作者/久永草太(ひさながそうた)

1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。

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