ともされた由など知らず火は息吹く厨に線香に軍艦に
“先日の牧水・短歌甲子園の決勝戦用作品集のなかに、目を見張る一首があった。
わからない、わたくしは火の匂いさえ昭和史に軍艦が傾く
NHK学園高校 重黒木俊陽
残念ながら決勝に勝ち進むことができず、壇上で披露されることはなかった作品なのだが、吉川宏志さんらも絶賛していた。かつて軍艦を傾けた火の匂いを、我々は知る由もない。僕の人生に、火は基本的に良い物として灯って、お湯を沸かしたり、花火を煌めかせたりしてくれている。人を殺してしまうような悪い火の匂いを、幸いにしてまだ僕は知らない。いや、きっと火に良悪の区別などなくて、あるとすれば、それは人が作る区別なのだろう。”
作者/久永草太(ひさながそうた)

1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
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