本心を聞かせろ、なんて 内腔を伏せて運ばれくる半身揚げ
札幌で食べた若鶏の半身揚げが未だに忘れられない。たぶん中学生の頃だったと思うけれど、あれは衝撃だった。明らかに鳥の形をしていて、その唐揚げに注がれた僕の視線は、おそらく食べ物を見るときのそれではなかったと思う。どこからどう手をつければいいのか分からず、とりあえずひっくり返すと、あばらの内側が空洞で、それがとても不思議な光景として脳裏に焼き付いている。まごまごしているうちに、父の手によって手羽先の部分が捥がれたりナイフで一口分に切られたりして、鳥だったそれは少し食べ物に近づいて、口に運んで飲み込んで、それでもまだ鳥なのだった。
作者/久永草太(ひさながそうた)

1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。
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