ロッカーのキーをなくした午後のよう半透明に暮れゆくわたし
鶏の半身揚げは、私はまだ食べたことがない。母が函館出身なので、北海道に多く行っているものの、その存在を知らなかった。札幌と函館の地域差や、旅行者と居住者の違いもあるだろう。子どもの頃から夏休みには祖父母に会うため、函館を訪れていた。しかし、大学生になってから同級生と一緒に行ったときの函館の印象がまるで違っていて、とても驚いた。旅行者の視点で見た函館の街は、とてもおしゃれで憧れに満ちていた。旅行者の手には渡らない鍵を持つ私は、その扉を開けずに3日間を過ごした。
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。
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