No.675/2025年11月5日【枇杷】 半年の雨たくわえてこの枇杷の花も実となる母の日の頃

久永草太

小学生の頃のとある母の日、そのことをすっかり忘れてプレゼントを用意していなかったのでどうしようかしらと考えた末に、ひとつひらめく。そうだ、そうしよう、と思って児童館の横の空き地に生えている枇杷の木に登りに行った。ちょうどその頃が枇杷の実のなる時期だった。二、三個捥いでは一つ食べ、二、三個捥いでは一つ食べ、という具合に収穫していく。持って帰るころにはおなか一杯だった。母は喜んで見せてくれたけれど、元手のかかっていない木の実に内心どう思っていたかはわからない。

作者/久永草太(ひさながそうた)

1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。

コメント

タイトルとURLをコピーしました