No.567/2025年7月20日【齢】 三世紀の齢をかさね今日われに逢ひたる本よ背綴じ紐撫づ

菅原百合絵

愛書家でも古書狂でもないので、物理的に古い本に日常的に触れているわけではないが、それでも時折十七世紀・十八世紀につくられた古本にお目にかかることがある。
本が高価な時代ゆえ、ルリユールといって職人が趣向を凝らしてつくられた美しい本も多い。独特な匂いをかぎながら、表紙を開く時には故しらずときめく。
とはいえ、圧倒的に便利なのはGallicaやGoogle Booksといったオンラインで古い本を参照できるプラットフォームで、これらの目覚ましい進展によって自室にいながら世界各国に眠っているさまざまな本にアクセスすることができるようになった。
パソコンに表示されたPDFでも、フォントや文字の形によってその本が何世紀につくられたかは比較的容易に見分けることができる。もちろん古い本ほど読みづらく、新しい本は読みやすい。

作者/菅原百合絵(すがわらゆりえ)

1990年、東京生まれ。「心の花」会員。歌集に『たましひの薄衣』(書肆侃侃房)。本業はフランス文学研究。専門は十八世紀フランス文学・思想、とくにジャン゠ジャック・ルソー。

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