No.511/2025年5月25日【匂ひ】 夕飯のにほひの雑じりあふ路地に鼻うごかしてさすらふわれは

山下翔

散歩をするときは、できるだけ通ったことのない道を行くようにしている。知っている道から一つだけ違えて歩けば、まず迷うことはない。しかし景色は随分違う。心細さがあって、それがいい。むろん勝手気ままに行くときもある。不安を楽しむ元気があるときだ。夕どき、どこからと知れず流れてくる〈家〉の匂い。帰る場所があるっていいことだろう。

作者/山下翔(やましたしょう)

1990年、長崎県生まれ。福岡市在住。「やまなみ」所属、「ざんぼあ」編集同人。2007年ごろ、短歌を始める。歌集に『温泉』『meal』。現在、長崎新聞に「ぶらぶら短歌日記」連載中。

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