夕飯のにほひの雑じりあふ路地に鼻うごかしてさすらふわれは
散歩をするときは、できるだけ通ったことのない道を行くようにしている。知っている道から一つだけ違えて歩けば、まず迷うことはない。しかし景色は随分違う。心細さがあって、それがいい。むろん勝手気ままに行くときもある。不安を楽しむ元気があるときだ。夕どき、どこからと知れず流れてくる〈家〉の匂い。帰る場所があるっていいことだろう。
作者/山下翔(やましたしょう)

1990年、長崎県生まれ。福岡市在住。「やまなみ」所属、「ざんぼあ」編集同人。2007年ごろ、短歌を始める。歌集に『温泉』『meal』。現在、長崎新聞に「ぶらぶら短歌日記」連載中。
コメント