No.493/2025年5月7日【頭蓋】 死んだ鳥生きてる鳥みなかへりくる若き獣医の頭蓋のなかに

伊藤一彦

久永さんになきがらを一部分でも拾ってもらえた鳥はしあわせである。成仏して、その後ふたたびこの世を飛ぶことができるかも知れない。そのためには歌の言霊の力が必要かもしれない。寺山修司はそんな歌の力をもっていたような気がする。「撃たれたる小鳥かえりてくるための草地ありわが頭蓋のなかに」は彼の歌集『空には本』の扉に置かれている歌である。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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