壺ばかり並ぶ夢見るそのなかの壺のひとつにひびく心音
とても大きな壺がいくつも並んでいました。近づいてみると、私がすっぽり入ってしまいそうです。中を覗いてみたくなりました。覗くには、梯子が必要なほど高くて、登ることもできません。あるいは、たまたま梯子があって覗いたら、簡単に落ちてしまいそうです。その側をただ歩いていたら、音がするような気がしてきました。耳をそばだてると、やはりひとつの壺から音がしました。それは心音のようでした。
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。
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