No.589/2025年8月11日【猫】 かろうじて輪郭たもつ夏の午後わたしの腕と猫のしっぽと

乃上あつこ

「私は猫に対して感ずるような純粋なあたたかい愛情を人間に対していだく事のできないのを残念に思う」と、寺田寅彦は言う。私も実家で猫を飼っていた。まさに猫は、かわいがる気持ちを呼び起こす存在だ。先週は35度以上の猛暑日が続き、サウナどころかサウナでロウリュウを浴びているような熱風だった。あらゆるものが溶けてしまいそうなのに、溶けていないのが不思議なほどである。数日前から曇りがちな天候のおかげで、気温が落ち着いている。このくらいの暑さで手加減してほしい。

作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。

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