雲は龍に、風は虎に従えど客は酸っぱき予報に従う
台風接近のニュースに、人は酸っぱい顔をする。平日ならば会社や学校を休めるかもしれないという、一抹のわくわく感が浮上するが、週末ともなれば、どんなに酸っぱいものを食べた酸っぱさなのかと思う表情になる。その結果、予定はキャンセルされ、家でおとなしく過ごすプランに変更される。
先週の土曜日は、銀座で浴衣まつりがあった。実際には台風がそれて、雨もほとんど降らなかった。日本人は台風接近の予報に忠実に従ったため、街中にわずかしかおらず、普段より一層外国人観光客が多い様子だった。新たな天気予報に安堵した日本人は、午後から徐々に増えていった。こんな現象に「雲龍風虎」という言葉を思い出すのだ。
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。
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