No.527/2025年6月10日【並】 嘘笑いの並ぶ日常 嘘泣きを最後にした日を思い出せない

乃上あつこ

昨日の久永さんのごちゃごちゃとすっきりの歌から、私は感情の図鑑を想起した。社会人としてのマナーや他者への思いやりとして、笑顔を作る機会は多い。嘘とは言い切れないことも多々ある。一方で、多少嘘でも口角を上げて笑顔にすると、脳が騙されて気分が改善するという文章を読んだことがある。笑顔というのは、複雑だ。他者だけでなく、自分の内部にある脳まで騙せる。それに比べて、嘘泣きはどこか子供っぽく、憎めない。嘘泣きをしたことがあったかどうかすら思い出せない。昨日は、塚本邦雄の命日だった。没後20年。塚本なら、嘘笑いと嘘泣きをどう捉えるだろうか。

作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。

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