盃に「ひょん」をなみなみつぎましょう、ひょんなことから始まった旅
今回の旅は、高千穂峡から高千穂峰がテーマだった。けれども、一人旅で、車の運転もできない上に登山経験もない。高千穂峰は諦めていた。ところが、ひょんなことから私は高千穂峰山頂到達を成し遂げてしまった。話せば長いのだが、JR霧島神宮駅からタクシーで霧島神宮に向かう時に、運転手さんから初心者でも登れることを聞いた。時間もまだ午前9時前。そこで急遽行き先を変更し、高千穂峰に登ることにした。ところが歩き進めるつれ、なかなかの山だと気づいていく。無理なら断念し、遊歩道の散策に切り替えてもいい。そう思った辺りでどこからか山の神のような人が現れた。私は必死でその神についていく。神に導かれるまま必死で山頂まで登った。下りも大変だったが、神に砂滑りを教わり雲海を歩くようにして下山した。
この「三世代のいちごつみ」もまた、ひょんなことから始まった。私は「ひょん」の力を信じている。
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。

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