神無月の満月の照る高千穂の森の奥処は闇を醸せり
乃上さんは高千穂を旅している。夜はきっと高千穂神社で神楽を楽しむはずである。帰り道はきっと暗いはずだが、幸い今日は満月だ。寒さは厳しいが、それも高千穂らしい清浄冷たさである。私が高千穂に行ったときは名物のかっぽ酒で身をあたためた。乃上さんはどう身をあたためているだろうか。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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