香水の吹きかけた宙を抱きしめるムスクほのかにまとう木曜
秋になり香水を変えてみる。オレンジの花の香りからムスクに変えた。肌に直接つける時は足首につけることが多い。けれど、ほんのり香らせたい時は、香水を空中にワンプッシュし、それをハグして空気ごとふんわりまとう。
一昨日の久永さんの歌は、祝賀会で会ったたくさんの方々に、ほんのり記憶されたいという意味だと私は解釈した。昨日の伊藤先生は、それを恋の歌を捉えている。ハグすることは、誰かとだけではなく、香水を吹きかけた空中とだってできる。二人の歌からそんなことを思った。
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。
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