質も量も想像つかぬ牧水のさびしさ酒の深きに知るも
先日の宮崎大学の公開講座での牧水についての議論は面白かった。中村佳文さん、久永草太さんの提起がいまも心に残っている。「さびしさ」についての議論もあった。私は牧水が感じていた寂しさは桁違いの強さだったと思う。その意味で歌と酒がどうしても必要だった。
長女の石井みさきが「父の酒は常識の域である医学知識や合理主義をほとんど無視した」ものなのは必然であり、決して「疲労回復や明日の活力のため」といった生易しいものでなかったと言っているのは、身近で牧水を見ていた人の貴重な証言と思う。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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