「君は君の不幸の中で幸福だ」ペットボトルをつぶして捨てる
カフカの親友のマックス・ブロートは、カフカへの手紙で「君は君の不幸の中で幸福なのだ」と書いている。ネガティブな手紙や発言をたくさん残しているカフカ。ネガティブに物事を捉えることは、絶望的であると同時に、それで安堵することもある。生きているうちに名声を得ていたら、ポジティブな発言が増えたとも思えない。空になったペットボトルも、そのままなら水が入っていない欠如感を感じるが、つぶしてリサイクルに出せば、次の生産へと意識が向く。昨日はカフカの誕生日だった。カフカには、カフカ生誕祭という言葉より、「カフカ忌」がよく似合う。塚本邦雄の次の歌もよく知られている。「カフカ忌の無人郵便局灼けて頼信紙のうすみどりの格子」
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。
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