No.542/2025年6月25日【伸】 長い髪なびかせ固まるブロンズの少女の像に伸びる永遠

長い髪なびかせ固まるブロンズの少女の像に伸びる永遠

風が吹いていない真昼、街頭に立つ少女の像だけが、スカートと髪を靡かせて固まっている。風は吹いたまま、少女は少女のまま。こうして時を伸ばして永遠となった少女は、永遠を持たない通行人に語りかける。老いること、死ぬことは永遠からの解放である、と。

作者/乃上あつこ（のがみあつこ）

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。