No.719/2025年12月19日【夜】 神楽鈴ひとつ落としてゆきました、それからずっと鳴りつづく夜

乃上あつこ

念願の高千穂の旅を終えてから、高千穂の景色が忘れられなくなりました。夜神楽で見た鈴がまるで私の胸に埋め込まれてしまったかのようです。私はこの鈴をいつか返しに行かなくてはなりません。落とし物は持ち主を探しています。
ところで、私はいま北へ向かう電車に乗っています。先日電車でなくした物が見つかったという連絡を受けたためです。実のところ、とても大事な物をなくしたので、その後ずっと震え続けておりました。小池光さんはよくこの路線に乗って歌を作っていたと『歌壇』で読みました。そして、この連載に「伊藤さんは恩人ですよ」と書いてありましたね。

作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。

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