No.668/2025年10月29日【流】 みづからを流されびとと歌ひたる斎藤茂吉みちのくの人

伊藤一彦

乃上さん、山形にゆかれるとのこと、いい旅になりそうですね。「梁」に力作の茂吉の韻律論を書かれたあとですので、一層の発見と感激がありそうですね。茂吉にとって故郷は絶対の価値をもつものでした。牧水、白秋、啄木とちがって、茂吉は文学のために上京したのではありません。14歳の時に、外的な事情で上京したのです。『赤光』で「少年の流されびとのいとほしと思いひにければこほろぎが鳴く」とよんでいます。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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