No.653/2025年10月13日【街】金色の香りの糸を縫い合わせ金木犀が街を縁取る

乃上あつこ

金木犀が香る季節になった。その香りはくきやかに漂う。まるで空気に縫いつけられた糸のように。いつも通っている道でも、金木犀のある場所は秋の街の主役になったように輝き出す。少しずつ気温が下がって酷暑の記憶を失った街は今、金木犀の香りに縁取られている。牧水にも金木犀の歌がある。〈木犀の匂ふべき日となりにけりをちこち友の住みわびし世に〉『砂丘』

作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。

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