No.646/2025年10月7日【十三夜】 終点の二十三夜のバス停は今日もたたずむ空を見上げて

乃上あつこ

私の住む埼玉県には「二十三夜」という風流な地名がある。バス停や交差点にもその名がついており、月待信仰の名残りだそうだ。地名となって残っているところは珍しいと聞く。人々が集まって月の出を待ち、祈りを捧げていた。付近には二十三夜塔が残され、かつての人々の魂と共にそこに佇んでいる。民衆の祈りは、どのようにすれば届くのか。政治に期待せず、ただ月を待つだけなのか。

作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。

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