No.611/2025年9月2日【炭酸】 炭酸は抜けたあたりがちょうどいい一万日を生きながらえて

久永草太

「10000日記念日を祝おうと思ったら過ぎてたわ。10008日おめでとう」というメッセージが友達から届いたのが8月26日。逆算すると8月18日が僕のおめでたき、祝すべき、褒め称えるべき生誕一万日だったらしい。お盆明けの混雑で勤務先の動物病院がめちゃくちゃ忙しかった月曜日、ということしか思い出せない。たしか昼はコンビニのおにぎりで、夜はそうめんだったと思う。ちょっと奮発しておにぎりはエビマヨだったかもしれない。そういうことにしておこう。知らないうちにやって来て、いつのまにか去っていた記念日に、僕は祝杯のひとつも上げてやることができなかったけれど、騒ぎ立てずに淡々と過ごせたのは、それはそれで一万日生きた大人のありようとして、悪くなかったかもしれない。

作者/久永草太(ひさながそうた)

1998年、宮崎市生まれ。宮崎西高文芸部で短歌を始める。宮崎大学在学中は宮崎大学短歌会で活動、第三十四回歌壇賞を受賞する。現在は牧水・短歌甲子園OBOG会「みなと」、「現代短歌 南の会」、「心の花」所属。獣医師。

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