八月は互いの記憶を合わす月 花火が消えて眼は何を追う
八月は戦争を振り返ったり、お盆で先祖の霊を弔ったりする月である。花火のように空に照らし出され、かつての記憶をこうだったよね、こんなことがあったよねと、過去から現在までの流れを確認をしていくような感じだ。ところで、今回の台風レンレンは、香港の少女の名前で「玲玲」の広東語読みだ。北京語ではリンリンとなる。玲瓏の玲であり、玲瓏を北京語読みすれば「リンロン」なのである。まさに久永さんの玄関チャイムの音の「リンロン」なのだ。(2025年5月12日のいちごつみ参照)玲瓏の意味は、玉などが透き通って輝くという視覚的要素と、金属や玉が澄んだ音で鳴る聴覚的要素の両方がある。玉が透き通ることで、その表面と透過する先のもう一面が見え、玉と玉が触れあって鳴るということからも、玲瓏という語から私は、視覚的照合と聴覚的振動といった単一でないもののゆらぎを感じ取る。
作者/乃上あつこ(のがみあつこ)

1976年、横浜市生まれ。東京女子大学文理学部卒。中国留学を経て現在は銀座の美容施設に勤務。2014年から短歌を始め、第三十一回玲瓏賞受賞。現在は玲瓏、現代短歌南の会「梁」、牧水研究会に所属。
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