炎熱の庭を黒蝶まひわたるわつしよいわつしよいと言はず
暑い毎日である。以前は南のほうが気温が高かったが、いまは宮崎などより北のほうの関東や時には北海道のほうが高温である。人間はまだしもクーラーなどがあるけれども、生き物たちはたいへんである。今日もいちばん暑い午後に庭を西から東へ横切ってわたっていく黒のアゲハ蝶をみた。蝶道をゆっくりとすすむ黒蝶にしばし見入った。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。
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