No.496/2025年5月10日【壺】 細長き壺の入口の若山家よそ者のよく訪ね来たりき

伊藤一彦

若山牧水は東郷町の坪谷の家で生まれた。牧水自身が書いているように、坪谷は「山と山との間に挟まれた細長い峡谷」の地である。角川日本地名大辞典には「さながら壺の形に似て入口が小さく奥が広いところから、坪谷といわれたのであろう」と書かれている。その入口の一番戸に若山家はあった。他国者は坪谷に来るとまず。若山家で草鞋を脱いだ。その彼らの話を聞くのが幼い牧水には楽しみだった。牧水の心は広い世界にあこがれた。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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