恋ごころ秘めたる人を月影は腫れものさするやうに照らせり
今年も「老いて歌おう」の選歌をいましている。全国の高齢者の応募短歌作品を胸を熱くして読んでいる。昔の恋、今の恋を読んだ作品が少なくない。去年の優秀賞には「思い人胸に秘めたる若き日よ鶴折りて疲れし指を温める」の印象歌があった。90歳の作者である。以前の入賞歌で103歳の作者の「紫陽花はうつり気な花というけれど私の彼もちと気にかかる」を読んでその健やかさと明るさに感動したことを思い出す。
作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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