久永草太

啄木鳥きつつきになってつつけばやわらかく木霊する人亡くして静か 奥田亡羊さんの訃報が届いた。心...

実るほどこうべをたれる稲穂より深々と萎れたるほうれん草 葉もの野菜が高いので、お見切り品コーナ...

あぶら汗の酸っぱき髪を泡立ててはやく終えたし二十四時間 恥ずかしい失敗をすると、かあっと頭皮の...

巨大なるぐい飲みあらばそに酌まんミツマタ甘く香る林を 花見酒、とはいかなかったけれど、友達と夜...

春の日の磯にクロサギ一羽いてなにかわからん光を食べる 伊藤先生に比べたら雀の涙ほどなのだろうが...

手をつなぎ歩く行為は転倒時受け身がとれず恋は危険です 今日27歳になった。ハッピーバースデー、...

新じゃがの皮ずるむけてくるような心で満員電車は嫌い 新じゃがの、もはや剥く必要がないほどの薄い...

壱岐焼酎しみつつ胸は隣星に引かれて満ちる潮のごとくに 乃上さんの言う隣星とはどこだろう。僕は月...

一年のぜんぶを持って帰る日の小学生座っちゃう交差点 離任式か何かだろうか。春休み中の登校日と思...

勢いがつくと危ない口吻の流れに竿を、火には油を 一昨日は僕の歌集『命の部首』の批評会を開いても...