乃上あつこ

ボディブロー打ち込むあたりにひびく咳あばらのうちに夕日はしづむ 先月ひいた風邪により咳がまだ出...

老舗では情緒と映る「支払いは現金のみ」の筆書きの文字 今どき現金以外の「術のない」支払いは不便...

起きられず二度寝の甘い蜜を吸う二度目を生きる術なきわれら 意識の有り無しの観点から、眠りはしば...

店員の予言をたどる粉砂糖、こぼれてスカートの上に散る カフェでマラサダなるものを注文した時、店...

パスポートの中は雪原　新しい十年はすでに始まっている 有効期限が切れたパスポートを作り直した。...

本日のメインの仕事は謝罪にて朝から謝る顔をしている 接客業をしていると謝罪する機会が非常に多い...

缶詰の賞味期限の二年後のいくつかの我が知る桃の味 この度は心からお悔やみ申し上げます。俵さんの...

マシュマロのように咲いたらマシュマロのように溶けゆく春の夜の夢 昨日の草太さんの文章「桜は淡々...

冷酷な操り人形師の手つき見入る誰もが糸でつながれ 間接的であればあるほど人は無意識で残酷になる...

泥つきの牛蒡の眠りを覚ますごと水かけ、洗い、皮をこそげる 私は春といえば、孟浩然の「春暁」や杜...