久永草太

乳色の歯を尖らせて猛獣になるかもしれぬ子猫のあくび 猛獣とはなにもライオンのことばかりを言うの...

更衣ころもがえ済みて冬毛はひと冬の思い出として浮游をやめず 換毛期も後半にさしかかり、動物病院...

一本の胡瓜叩きて耐え切れず今宵生まれる宝石いくつ 叩く、ということに興味がある。おっと大変な誤...

まなぶたを持たぬメダカに一生ひとよとは一秒をさえ途切れぬ映画 メダカ、というか、魚類全般に瞼が...

また罪を重ねてしまう足裏の潰れた米にも七人の神 もし僕を名乗る人物とご飯を食べて、ごちそうさま...

大丈夫、喜劇は続く　掃除機でカレー粉吸って以後使うたび 使うたび、カレーの匂いを撒き散らす掃除...

街灯の下の草生に夜は来ず葉緑体の勤労かなし 昼は太陽光、夜は蛍光灯のあかりのもと、一日中光合成...

英論文読み終えぬまま宙吊りの測鉛の重み眼に肩にくる 最近疲れ目がひどい。眼球が常にパサパサして...

崩落の危機迫る夜の猪口ちょこ一つ水切りカゴの岬に載せる 掃除機をかけようと思うと部屋を片付けね...

牧水が産まれ直して呑みにくるほどのうまさよ鍋島の味 最初に飲んだ日本酒は青森の「田酒」で、これ...