久永草太

豆乳の甘さで煮える歳上の後輩くんの惚気話は 一度別れて、そのあと寄りを戻した歳上の後輩くん。「...

拡張子消えてしまって開けないファイルのようなあの曲のサビ もうここまで出かかっているのだが、思...

ひらがなを書くのが苦手「ふ」が苦手どれも不服に顔そむけおり 小生、生まれながらの悪筆につき、文...

泳ぎ着きし小島のように祖母がいて改札口で我を迎える 飛行機で伊丹空港へ、そこからリムジンバスと...

築二十六年せまる我が脊柱立っていられぬ揺れまだ知らず 震度6強以上の揺れで、人間は立つことがで...

菜の花を摘みて帰れば家までの路上に流れだす金の川 銀の歌が続いたので、金の歌を。散歩道に菜の花...

絞れども絞れどもまだひとしずく落ちてくるなり春の別れは ジャズバー「ファークライ」のマスターが...

弥生土器のごとやさしい静かさで花を抱えて立っている人 まさか伊藤先生から「ワンダーネット」とい...

一本の脚を支えに睡るとき鷺が掴んではなさぬ地球 中也の「骨」を読むとき、一本脚で微動だにせず寝...

にくんでも仕方なきもの数多く梭子魚かますの小骨にゅっと吐き出す 人前で食べるのを躊躇してしまう...