No.425/2025年2月28日【生きもの】 「すみません 回送中です」生きもののごとくにバスが謝り走る

伊藤一彦

宮崎の人は見慣れているが、圏外から宮崎を訪れた人が回送中のバスの行き先を示す 電光掲示板を見ると、オヤと思ったりびっくりしたりするらしい。「すみません 回 送中です」と書かれているのだ。「回送中」だけなら当たり前だが、「すみません」 の謝りの言葉が最初にあるのだ。全国でもめずらしいそうで、宮崎の優しい県民性を示 していると好意的に言ってくれる県外の人もある。バス会社でなく、バスが謝っている と考えるとユーモラスだ。バスにお疲れさんと言いたくなる。 乃上さんの歌が電車の歌だったので、バスの歌を詠んでみた。乃上さんは宮崎に見えたときに このユニークなバスを見られただろうか。県外の観光客のなかにはわざわざ写真を撮っていく 人もある。

作者/伊藤一彦(いとうかずひこ)

1943年、宮崎市生まれ。「心の花」会員。「現代短歌 南の会」代表。若山牧水記念文学館長。読売文学賞、寺山修司短歌賞、迢空賞、斎藤茂吉短歌文学賞など受賞多数。

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